米10年金利が5%台に再浮上し米株が調整する中、JPXは9月末SQ前後に効くETF呼値変更・オプション調整・監理銘柄指定など需給関連告示を集中公表した。裁定取引やオプション建玉、パッシブ運用に修正圧力が生じる可能性がある。ドル円は9月11日時点154円台で直近未確認。

内容詳細

米国市場では9月14日時点でS&P500が7,619.98(前営業日比-0.48%)、NASDAQ総合が26,186.41(同-0.56%)、9月15日のダウ工業株30種が52,093.11(同-0.63%)と主要指数が軟調に推移した。米財務省が公表した9月15日時点の利回りは2年4.67%、5年4.83%、10年5.00%、30年5.36%で、10年が再び5%台に乗せた。ドル円は直近値が未更新のため、確認できるのは9月11日時点の東京市場スポット中心154.59円・東京17時時点154.22円である。WTI原油も9月9日時点の97.26ドルが最新値となる。

国内では、JPXが9月15日に需給・ポジショニングへ影響する告示を複数出した。JPXニュースによると、NEXT FUNDS日経225連動型上場投信(1321)を含むETF3銘柄で売買単位と呼値の単位が変更される。呼値単位の変更はETFの板厚・執行コストに直結し、裁定取引やマーケットメイクの在庫・ヘッジ戦略に修正を迫る。また制限値幅の拡大(1銘柄)も公表されたが、本文未取得のため対象銘柄と拡大理由は原文参照となる。

オプション関連では、9月29日調整分と9月30日調整分の有価証券オプションの取扱いが公示された。9月29日調整分9月30日調整分は、コーポレートアクションに伴う権利行使価格や売買単位の調整を扱う。9月末のメジャーSQを控え、オプション建玉を持つ投資家はデルタ・ガンマの再計算を迫られる。

さらに監理銘柄(確認中)指定:かどや製油同:レオパレス21が公表された。監理銘柄指定は上場廃止リスクの確認段階を示し、指数組み入れ除外や機関投資家の売却圧力へ波及し得る。加えて、グロース市場からスタンダード市場への変更2件、新規上場2銘柄の初値決定前気配運用、データセンターインフラ日本株ETN等の呼値単位設定も公表されたが、いずれも本文未取得のため詳細は原文参照である。

拡張考察

本稿のテーマである需給・ポジショニングを考えるうえで、まず外部環境の数値を確認する。9月14日のS&P500は7,619.98(前営業日比-0.48%)、NASDAQ総合は26,186.41(同-0.56%)、9月15日のダウは52,093.11(同-0.63%)と、3指数とも調整した。米財務省の9月15日時点利回りは2年4.67%、5年4.83%、10年5.00%、30年5.36%である。10年が5.00%に再到達したことは、リスク資産の割引率上昇と円キャリーの資金調達コスト上昇の両面で、日本株と円金利のポジションに直結する。ドル円は9月11日時点の東京中心154.59円、17時154.22円と154円台を維持していたが、直近値は未確認である。WTI原油も9月9日時点の97.26ドルが最新値で、エネルギー価格の高止まりが企業マージンと家計消費に与える影響も無視できない。

ヘッジファンドのアナリストにとって、JPXの告示は単なる事務連絡ではない。ETF3銘柄の売買単位・呼値単位変更は、特に日経225連動型ETF(1321)のように裁定取引の原資産として使われる商品では、板の刻みが変わると高頻度系の執行戦略やインデックス裁定の損益分岐点が変わる。裁定業者が建てる現物バスケットと先物・ETFのスプレッドが一時的に不安定になる可能性があり、個別銘柄の指値注文を置く場合は呼値変更後の最良気配の変化を織り込む必要がある。また、制限値幅拡大は1銘柄と件数こそ少ないが、拡大対象銘柄が指数構成比の高い大型株であれば、先物のヘッジに用いるバスケットのリスク量が変わる。本文未取得のため具体名は不明だが、対象を早めに確認することは低位株のポジションを持つファンドに限らず、ショートカバーの経路にも効いてくる。

9月29日・30日調整分の有価証券オプション取扱いは、メジャーSQ前の建玉管理に直結する。コーポレートアクションによる権利行使価格や原資産数調整が入ると、既存オプションのデルタ・ガンマが理論値から乖離し、ヘッジ比率を再計算しなければならない。とりわけ月末に期日を迎える指数オプションと個別株オプションの双方で、調整後のネット・ガンマが市場参加者の想定とずれると、権利行使価格帯の近辺で先物・現物の売買が断続的に発生しやすい。

円金利トレーダーには、米10年5.00%・30年5.36%という長めのゾーンでタームプレミアムが高止まりしている点が重要である。2年とのスプレッドは33bp、10年と30年のスプレッドは36bpで、イールドカーブはスティープ化の形状を保っている。日本の超長期金利は米長期金利に連動しやすく、生命保険会社の運用ニーズや国債入札の需給とあいまって、20年・30年ゾーンの売り圧力が意識される。ドル円の直近値が未確認であるためクロスカレンシーベーシスの方向は断定できないが、米長期金利の上昇局面ではドル調達コストが上がり、円転コストがグローバルな投資家の日本国債投資の採算を悪化させる経路には注意が必要だ。9月11日時点のドル円154.59円は、本邦当局の口先介入が意識されやすい水準でもあり、ボラティリティの急変が円金利スワップのデルタに波及し得る。

日本株ストラテジストにとって、今回の告示群は、指数先物・ETF・個別株の需給が一斉に変わり得るタイミングであることを示す。グロース市場からスタンダード市場への変更2件(Green Earth Institute、フォーライフ)は、小型株ファンドのベンチマークや上場市場別の流動性プレミアムに影響を与える。監理銘柄指定は、かどや製油とレオパレス21の2社について上場廃止リスクの確認段階に入ったことを示し、パッシブファンドの除外候補として需給悪化が前倒しで織り込まれる場合がある。新規上場の初値決定前気配運用2件(オーディオストック、オリバー)やデータセンターインフラ日本株ETNの呼値単位設定は、新規供給とテーマ型商品の流動性を測る材料となる。

拡張して考えると、米長期金利5%台での株安は、日本株のバリュエーションとキャリーの比較で、配当利回りと10年金利の差が縮小することを意味する。海外投資家はグローバルな債券との相対比較で日本株のオーバーウェイトを維持するかどうかを再評価する可能性がある。また、9月末の権利確定日と配当落ちを前に、先物・オプションのロールとETF分配金の再投資が重なると、現物市場の商いは薄いものの先物主導で値動きが荒くなりやすい。9月は日米ともに季節的にリターンが出にくい月であり、CTAやリスクパリティ勢はエクイティのネット・ロングを減らしやすい。ボラティリティが高止まりすれば、ボラティリティ・ターゲット型ファンドが日本株を含むグローバル株式のエクスポージャーを機械的に削減する。

他の市場参加者が見落としがちな論点は、呼値単位変更のマーケットメイクへの影響である。ETFの呼値単位が小さくなると、スプレッドは縮小する半面、1ティック当たりの利益が減るため、マーケットメイカーは在庫リスクに見合う収益を確保するために最小取引単位を調整するか、板を薄くするインセンティブが働く。特に日経225連動型ETFは、個人の積立投資と裁定取引の双方が入るため、変更直後は仲値の不安定化が現物225の先物価格に飛び火しやすい。もう一つは監理銘柄の信用需給である。確認中の監理銘柄は空売り規制や信用取引の委託保証金率引き上げが段階的に入ることがあり、ショート勢のポジション解消が逆に買い戻しを誘発するケースもある。最後に、有価証券オプションの調整が9月29日と30日に分かれている点は、月末の権利行使日をまたぐ建玉のリスク量が連続的に変化する可能性を示す。SQ前にオプションのネット・ガンマが正か負かで、指数先物のリバランスが増幅されるか吸収されるかが変わるため、デリバティブ担当者は調整表と想定元本の分布を必ず突き合わせる必要がある。

海外フローに関しては、米10年金利が5%台に乗せたことで、日本の生保・年金による外債投資の為替ヘッジコストが再び上昇し、ドル円のフォワード需要がスポットを押し下げる方向に働く可能性がある。逆に、円安が進めば輸出セクターの業績修正期待が先物買いを誘い、CTAのトレンド追随が日本株ロングに再参入する余地もある。しかしドル円の直近値が未確認のため、方向感の断定は避ける。