9月21日時点の米国債利回りは10年4.96%、2年4.76%で順イールド。週初の米株はAI関連主導で大幅高となった半面、市場内部では1999年以来の異変が報じられた。金利低下は株高を支える一方、米金融政策の新情報は乏しく、上昇の持続性には注意を要する。

内容詳細

9月21日時点の米財務省データでは、2年債利回りが4.76%、5年債4.83%、10年債4.96%、30年債5.29%だった。2年と10年のスプレッドは+20bp、5年と30年は+46bpと順イールドが定着している。10年債が5%を下回る一方、30年債は5%台前半にあり、長めゾーンに期間プレミアムが残る。

株式市場では、ダウ工業株30種が9月21日に前日比+0.71%の52,048.83で終了。S&P500は9月18日時点で7,650.5(前日比+0.17%)、NASDAQ総合は26,522.55(+0.39%)が確認できる。CNBCのマーケット記事CNBCは、週初の米株がAI関連株の上昇や利回り低下・原油安を追い風に急伸し、S&P500は8月初旬以来の大幅高となったと伝えている。ただし本稿の実測データには9月21日のS&P500終値が含まれず、その上昇率は未確認である。

一方、別のCNBC記事CNBCは、指数上昇の裏で1999年以来の市場内部の異変が生じていると報じる。市場幅の悪化を示唆する内容とみられるが、本文未取得のため詳細は原文参照が必要だ。

利回り低下の直接的な政策材料は、本収集情報にFOMC関連の新規発言や経済指標の詳細が含まれていない。したがって、今回の金利低下が利下げ期待の高まりによるものか、単にリスク選好の一環なのかは特定できない。現時点では10年4.96%という水準を事実として受け止めつつ、今後の米金融政策を巡る情報を点検する必要がある。

拡張考察

三人のペルソナへの含意

株式アナリストにとって、今回の米株高はAI関連の一極集中的なリスクオン色が強い。CNBCが伝えるようにMeta株が12%上昇し、同社オプションの出来高が急増したCNBC。この現象は、指数全体の上昇が少数の超大型グロースに依存していることを示唆する。日本株の個別銘柄では、米AI投資の恩恵を受ける半導体・データセンター関連に連動余地がある一方、市場幅の悪化は追い風が持続しない場合の反動を大きくする。9月18日時点のS&P500の上昇率が+0.17%に過ぎない一方、ダウは9月21日に+0.71%とまちまちで、9月21日のS&P500実数値が未確認である点も、表面的な指数の強さを鵜呑みにできない理由である。

円金利トレーダーにとって、米10年4.96%と2年4.76%の20bpスプレッドは、逆イールドではないもののスティープ化が一服していることを示す。30年5.29%と5年4.83%のスプレッドは46bpあり、長めゾーンに期間プレミアムが残る。日本国債イールドカーブでは、超長期ゾーンが米30年との相関で動きやすい場面が続いてきたが、今回の米利回りが10年で5%を回復できない状況は、日本の超長期金利の上値抑制要因となり得る。ただし、日銀の国債買い入れやYCC的な枠組みが変更されない限り、国内要因が支配的だ。クロスカレンシーベーシスについては、本収集情報に実測値が無いため拡縮は未確認。ドル円は9月16日時点で155.39円と5日前の水準であるため、現在の水準として使えない。米金利低下がドル安圧力として作用すれば、円債投資家の為替ヘッジ付き米債リターンは低下する可能性が高い。

日本株ストラテジストにとって、米長期金利の低下は理論的には株式の割引率低下を通じてバリュエーションを支えるが、市場幅の悪化は指数の上値の脆弱性を高める。海外投資家の日本株フローは、米株のAI主導ラリーに追随する形でリスクオンポジションを増やしやすいが、日本株市場は米国ほどAI銘柄の集中が無いため、相対的にディフェンシブな動きになる可能性がある。また、米10年4.96%という水準は、日本株の益利回りとの比較で依然として魅力度が高いかどうかの判断を難しくする。

拡張される潮流

今回の米株高と米金利低下は、一見するとリスクオンだが、債券市場と株式市場が異なる景気シナリオを織り込んでいる可能性に注意したい。債券利回りの低下は、景気減速や利下げ期待を反映することが多い。一方、AI関連株の上昇は将来の収益成長期待を反映する。両者が同時に進行する場合、どちらかが誤りであるか、あるいは「生産性向上によるインフレなき成長」という理想シナリオを市場が先取りしている可能性がある。1999年以来の市場幅悪化というCNBCの指摘は、当時のハイテクバブルとの類比を想起させるが、当時と異なり現在は名目金利が5%近くあるため、バリュエーションの割引率が高い。このため、AI関連株の持続的な上昇には、金利低下だけでなく収益の裏付けが不可欠である。

米30年債利回り5.29%は、住宅ローンや社債発行など長期資金調達コストの高止まりを示す。逆イールドが解消した後のスティープ化は、景気後退の前兆とされることもあるが、今回は財政プレミアムや供給要因が混在しており、単純な景気シグナルとは言い切れない。米中間選挙を巡る財政支出期待は、長期金利の押し上げ要因として燻り続けている。また、イラン情勢を巡りトランプ氏が強硬姿勢を示しているとCNBCが報じており、ホルムズ海峡リスクが原油高を通じてインフレ・金利に波及する可能性は無視できないCNBC。ただし、本収集情報では公式の供給途絶は確認されておらず、現時点ではリスク評価の段階に留まる。

見落とされがちな論点

市場参加者が表層の株高に注意を向ける一方、次の点のキャッチアップが必要だ。

第1に、CTAやボラティリティコントロール戦略のポジショニング。S&P500が8月初旬以来の大幅高となったことで、実現ボラティリティは低下し、ボラティリティ目標型ファンドやリスクパリティは株式配分を機械的に増やしやすい。一方、Metaのオプション出来高急増が示すように、個別銘柄の短期オプションにガンマが集中している可能性がある。市場が反落に転じた場合、マーケットメーカーのヘッジ売りが増幅要因となる。

第2に、米国債市場のポジショニングと実質金利の内訳。名目10年4.96%がインフレ期待の低下によるものか実質金利の低下によるものかは、情報源にブレークイーブンインフレ率のデータが含まれず未確認だが、この区別は株式のセクター選好を変える。実質金利の低下ならグロース株への追い風が継続しやすく、期待インフレ率の低下なら景気減速シグナルとしてディフェンシブ選好が強まる。

第3に、日本の機関投資家の外債投資と為替ヘッジコスト。米30年5.29%は円建て投資家にとって依然として高いが、ドル円が9月16日時点で155.39円と5日前の水準であるため、現在の為替ヘッジコストは算定できない。しかし、米金利低下局面でドル円が下落すれば、為替ヘッジなしの外債投資の円換算リターンは目減りする。逆に、円金利が低位に留まる中で米金利が高止まりすれば、為替ヘッジ付き債券のキャリーは魅力的だが、クロスカレンシーベーシスが拡大するとその妙味は削がれる。

第4に、シーズナリティと四半期末のリバランス。9月末は年金基金やアセットアロケーション型ファンドのリバランスが集中する。株式が債券に対してアウトパフォームした場合、株式売却・債券買いのリバランスが発生し、米長期金利に一時的な低下圧力をもたらす。これは経済ニュースと関係なく起きる需給要因であり、円金利トレーダーも米10年4.96%の節目を試す動きの背景として認識すべきだ。