8月19日の米株は主要3指数が小幅高。8月20日の米10年債利回りは4.69%と高水準。日本ではJPXが日経225連動ETFやTOPIX年4回決算型ETFの新規上場を承認する一方、MSCIジャパンカントリー連動ETFの上場廃止を決定。国債先物の受渡適格銘柄・交換比率も更新され、現物と先物の需給に直結するイベントが重なった。監理銘柄指定や新規上場承認もあり、供給サイドの点検が必要。
8月19日の米国市場は、S&P500が7,707.98(+0.21%)、NASDAQ総合が26,331.09(+0.16%)、ダウ工業株30種が53,463.05(+0.22%)と小幅に上昇した。8月20日の米財務省データでは、2年債利回り4.19%、5年4.39%、10年4.69%、30年5.23%。ドル円は8月18日時点の東京市場スポット中心相場で159.48、東京17時時点159.72であり、当日分は未確認。WTI原油は8月18日時点86.48。
JPXは8月20日、グローバルX日経225 ETFほか1銘柄の新規上場を承認した(JPX・グローバルX日経225 ETFほか1銘柄の承認)。8月19日にはニッセイETF TOPIX(年4回決算型)の承認も出ている(JPX・ニッセイETF TOPIX承認)。8月17日承認のiFreeETFゴールドプラスインカム(大和アセットマネジメント)を含め、指数連動型とコモディティ型の商品供給が増えている。
一方、NEXT FUNDS MSCIジャパンカントリー指数(セレクト)連動型上場投信の上場廃止等の決定が8月17日に出された(JPX・上場廃止等決定)。既存ETFの償還・廃止は、組成資産の売却を通じて指数構成銘柄への供給圧力になり得る。
TOKYO PRO Marketでは、カドーとヘッジファンドダイレクトの上場申請が公表され、レイシャスの新規上場承認が示された(カドー申請、ヘッジファンドダイレクト申請、レイシャス承認)。スタンダード市場ではakippa、グロース市場ではSkyfallの新規上場も承認されている(akippa、Skyfall)。山八商事では初値決定前の気配運用が公表され、IPO市場の価格形成手続きが意識される。
国債先物については、OSEが受渡適格銘柄及び交換比率一覧表の更新を公表した(JPX・国債先物受渡適格銘柄等更新)。更新内容の詳細は本稿では本文未取得のため原文参照だが、適格銘柄や交換比率の変更はCTD(最割安銘柄)やベーシス取引の前提を変えるため、JGB先物ポジションの管理上重要である。
監理銘柄(確認中)としてボードルアが指定された(JPX・監理銘柄指定)。確認中指定は上場廃止基準への該当可能性を市場に知らせるもので、信用取引や指数採用の扱いによって需給が変わる可能性がある。山八商事の気配運用(JPX・山八商事初値前気配運用)は、需給が薄い時間帯の値決めメカニズムとして、初値形成前の売買判断に影響を与える。
本稿の供給イベントは一見小粒だが、8月後半の流動性低下局面では増幅されやすい。以下、3つの読み手別に含意を整理し、その後、需給・ポジショニング上の論点を深掘りする。
円金利トレーダーにとっての含意
米10年債利回りは8月20日に4.69%と、2年4.19%とのスプレッドは50bp程度に維持されており、タームプレミアムを伴うスティープ化が続いている。この米金利環境は円金利にも波及し得るが、本稿作成時点で日本の現物利回りは未確認であり、単純外挿はできない。もっとも、OSEの国債先物受渡適格銘柄・交換比率更新は、円金利トレーダーにとって現物と先物の相対価格を測る基礎データの変更を意味する。具体的には、デリバラブルバスケットの構成が変わるとCTD(最割安銘柄)が交代する可能性があり、先物と現物のベーシス、インプライド・レポ、ネット・ベーシスなどの再計算が必要となる。市場で最も割安な銘柄が変われば、現物ロング/先物ショートのキャリー取引や、現物ショート/先物ロングのヘッジコストにも影響が及ぶ。四半期末に向けたポジション調整と重なれば、受渡適格銘柄のうち特定年限への需要が先物経由で現物市場に流れ込む可能性がある。ドル円は8月18日時点159.48と円安方向の値保ち合いが続いており、クロスカレンシーベーシスが円調達コストに影響していれば、JGB先物のヘッジ付きキャリーの損益分岐点も変動する。したがって、今回の更新は単なる事務連絡ではなく、評価損益再確認の契機と位置づけられる。
日本株アナリストにとっての含意
個別銘柄の需給では、ETFの新規上場と上場廃止が対照的である。日経225連動ETFとTOPIX年4回決算型ETFの承認は、設定時に指数構成銘柄への買い需要を生む一方、既存の類似ETFとの競合もあり必ずしも新規資金流入を保証しない。ただし、日経225先物との裁定に使われるETFは、低コストで流動性が高ければ裁定業者の現物バスケット代替として需要を呼びやすい。特にグローバルXの商品は海外投資家の日本エクスポージャー獲得経路となる可能性があり、設定額が増えれば日経225構成銘柄のうち指数ウエイト上位銘柄に買いが入りやすい。一方、NEXT FUNDS MSCIジャパンカントリー指数(セレクト)連動ETFの上場廃止決定は、残存投資家が償還を選べば、指数構成銘柄が売却される。MSCIジャパンカントリー指数はTOPIXと構成が近いとはいえ、浮動株調整や大型株ウエイトに差異があるため、重複の少ない中型株に需給インパクトが偏る可能性がある。また、監理銘柄(確認中)の指定は、空売り・信用買いの担保掛目変更や指数からの除外リスクを通じて、当該銘柄のみならず同セクターの裁定取引にも影響し得る。新規上場承認銘柄は、初値形成プロセスとロックアップ明けの売り圧力が焦点だが、本稿では詳細な需給データは取得できていない。
日本株ストラテジストにとっての含意
供給イベントの合計としてのエクイティ・ファイナンス需給が重要である。8月の新規上場・申請は、グローバルX日経225 ETF、ニッセイTOPIX、iFreeETFゴールドプラス、TOKYO PRO Market2社、スタンダード1社、グロース1社など複数に上る。一方で上場廃止は1本。足元の米株は史上高値圏の7,700台、米金利も4%台後半と、リスク選好とバリュエーション抑制がせめぎ合う環境である。日本株への海外資金流入が続くかは、ドル円159円台が示す円安と、米10年4.69%の高金利に依存する。円安は輸出採算改善要因だが、輸入コスト上昇と国内実質購買力への逆風もあり、一方向ではない。資金フローでは、年金の年度後半リバランスや海外勢の日本アンダーウエート解消が残るかが論点。ETFの新設は、販売チャネルを持つ運用会社の商品ラインナップ拡充であり、個人・法人の資産形成マネーを日本株へ取り込む器となり得る。ただし、上場廃止決定が続く場合、既存ETFの整理統合が進み、大手運用会社への集中が高まる可能性がある。
拡張される潮流
iFreeETFゴールドプラスインカムは、金価格連動に分配を加えた商品設計とみられる。WTI原油が8月18日時点86.48と高止まりするコモディティ環境下で、金ETFへの資金流入が続けば、東証の金ETF残高増加は円建て金価格への間接的買い圧力になる。ただし現物金市場との裁定は海外市場経由であり、国内ETFの需給だけでは完結しない。TOKYO PRO Marketへのヘッジファンドダイレクトの上場申請は、オルタナティブ運用会社自身が資本市場から資金調達する動きと読める。日本の個人投資家がプロ向け市場を通じて未上場の運用会社へ出資する流れが定着すれば、運用会社の株式という新たな供給が金融セクターに加わる。
見落とされがちな論点
第一に、JGB先物の適格銘柄変更は、CTD計算の変更にとどまらず、先物と現物のネット・ベーシスが拡大した場合に、銀行勢の国債保有在庫の評価損益やレポ市場での銘柄貸借料に影響する。特に月末・四半期末の決算評価前に更新が公表されると、保有国債の期中平均取得価格と交換比率の再計算が重なり、益出し・損切り取引を誘発しやすい。第二に、ETFの新規上場は設定・交換のための現物バスケット取引を伴う。日経225連動ETFは先物でのヘッジが一般的なため、設定額が増えると大阪取引所の日経225先物と現物の裁定注文が増える。裁定業者は先物ショート/現物ロングのポジションを持つため、先物の期近限月の需給が歪むとETFの市場価格とNAVの乖離が広がり、設定・解約が起こる。第三に、オプション市場のガンマ・ポジション。米株が小幅高にとどまった一方、日米金利差が大きい局面では、ドル円オプションのストライク集中が159円台に存在していた場合、スポットがその水準に接近するとデルタヘッジの売買が増え、現物為替を押し戻す力が働く。8月18日時点のドル円159.48は、市場参加者の関心が高い水準にある可能性があり、ポジショニング上の点検が必要である。第四に、季節性。日本では8月中旬は夏季休暇で商いが薄く、海外勢の本格的なリスク再構築は9月の米雇用統計やFOMC前後にずれ込むことが多い。新規上場や監理銘柄指定といった供給イベントは、薄商いの中で値幅を拡大させやすく、特に中小型株は指数連動の機械的売買の影響を受けやすい。第五に、CTAのトレンド追随。米株高・円安・原油高の組み合わせが続けば、株式・ドル円・エネルギーへのロングを維持する一方、米金利上昇局面では債券先物ショートを拡大しがちである。日本株については、円安が続く限り外貨建てリターンの目減りをヘッジするため、為替ヘッジ付き日本株ETFへの需要が維持される可能性がある。ただし、CTAのポジションは本稿のデータでは確認できないため、推論の域を出ない。