FRBが3年ぶりに利上げを実施した。9月17日時点の米国債利回りは2年4.67%、10年4.94%、30年5.29%と高水準。ダウは翌日反発したがS&P500は利上げ日に小反落。円ドルは9月15日時点154円台で、日本の投資家は米金利上昇とドル高再燃に備える必要がある。
9月16日のFOMCでFRBは3年ぶりとなる利上げを実施した。CNBCのライブ市況によれば、水曜日の利上げ決定後、木曜日の主要株価指数は上昇したとされるが、実際の終値で確認できるのはダウ工業株30種が9月17日に前日比+0.61%の51,778.04まで上昇した点である。S&P500は9月16日終値7,551.81で前日比-0.45%、NASDAQ総合は同日25,978.42で-0.01%だった。したがって、利上げ発表当日はハイテク・グロース株を中心に利益確定売りが出た一方、翌日には景気敏感・バリュー株への買いが入った可能性がある。
米国債市場では9月17日時点で2年債利回り4.67%、5年債4.78%、10年債4.94%、30年債5.29%と、年限が長いほど金利が高い順イールドを形成している。短期金利が4.67%まで上昇する一方、10年債とのスプレッドは27bpにすぎず、景気後退を織り込むには至っていない。政策金利の引き上げにもかかわらず長期金利が5%近辺で安定しているのは、インフレの持続性と財政プレミアムを市場が要求しているためと解釈できる。
CNBCの利回り記事では、利上げ後のインカム投資家向けに社債や高利回り債の買い場が指摘されている。詳細は原文参照だが、金融引き締め局面でもキャリーポジションを取れる証券が存在するという論調とみられる。日本市場へのインプリケーションとしては、円相場が9月15日時点で154.65円(東京市場スポット)とドル高水準にあり、米金利上昇が続けば円キャリートレードの再燃と輸出企業の採算改善が意識される。一方、米長期金利の上昇は日本の機関投資家による米国債投資の為替ヘッジコストを一段と押し上げるため、円建てリターンには逆風となる。
またCNBCはNVIDIAのジェンスン・フアンCEOが来年のチップ販売数量が2倍になるとの発言を報じた。AI投資の拡大は金融引き締め後も続く公算が大きく、米ハイテク株の収益モメンタムを下支えする要因となり得る。FRBの利上げがIT・半導体セクターの資金フローに与える影響は、金利感応度よりも業績見通しに依存する面が強い。
以上のように、米金融政策は引き締め方向へ転換したが、市場は緩やかな景気減速とAI資本支出の継続を同時に織り込んでいる。日本株・円金利の参加者は、米2年債と10年債のスプレッド、ドル円の実勢、為替ヘッジコストを注視する必要がある。
(a) 3ペルソナへの示唆
日本株ヘッジファンド・アナリスト
今回の利上げは3年ぶりであり、市場はタカ派的サプライズとして受け止めた節がある。S&P500は9月16日に0.45%下落したが、ダウは翌17日に0.61%上昇しており、金利上昇の打撃を受けやすい長期デュレーションのIT・グロース株から、景気敏感・高配当のバリュー株へ資金がシフトした可能性が高い。とはいえ、CNBCが伝えるNVIDIAの来年チップ販売数量倍増見通しは、AI関連資本支出が金利上昇に左右されにくいことを示唆する。日本株では、円安メリットの大きい輸送機器・機械・商社などがドル円154.65円(9月15日時点)の水準で業績上振れの追い風を受ける一方、内需・ディフェンシブ銘柄は相対的に出遅れる公算がある。個別では、米国での売上比率が高く、かつAI・データセンター向け需要を取り込む半導体製造装置・電子部品に注目が集まりやすいが、金利上昇が米国の住宅・設備投資を冷やせば、一般機械や素材の需要減速も視野に入れる必要がある。
円金利トレーダー
米国債市場は9月17日時点で2年4.67%、5年4.78%、10年4.94%、30年5.29%と、年限が延びるほど利回りが高い右上がりのイールドカーブを維持している。2年対10年スプレッドは27bp、2年対30年では62bpと、逆イールドではない。これは市場が景気後退よりもインフレの持続と財政プレミアムを織り込んでいることを意味する。FRBが利上げに踏み切ったことで短期金利の再評価が進み、円金利トレーダーにとってはドル調達コストの上昇とクロスカレンシーベーシスの拡大が重要な論点となる。日本の投資家がドルを調達して米国債を買う場合、為替ヘッジコストは一段と上昇し、円ベースの投資妙味は低下する。一部の国内勢はヘッジ付き米国債から日本国債や円建てクレジットへ資金を移す可能性がある。また、米長期金利の上昇が日本の超長期金利を押し上げる経路には警戒が必要だが、日銀のイールドカーブ・コントロールが残存する限り、10年超ゾーンの追随は限定的とみられる。むしろ、円安による輸入物価上昇が続けば、日銀の政策修正観測が再燃し、円金利のボラティリティが高まるシナリオに注意したい。
日本株ストラテジスト
日本株全体のバリュエーションは、米国の長期金利5%近辺という割引率の上昇を所与とすると、理論的には逆風だが、為替がドル高・円安方向にあるため、輸出企業の利益見通しは上方修正されやすい。海外投資家の日本株に対するスタンスは、円安と日本企業の自社株買い・ROE改善を評価する向きが多く、利上げショック後も資金フローの大きな流出にはつながりにくい。ただし、米国の引き締めが続けば、世界の流動性が細り、リスク資産全体の調整圧力が高まる。ストラテジストはMSCIジャパンのEPSリビジョンとドル円の相関、海外勢の日本株先物ポジションを注視する必要がある。テーマ的には、AI半導体のサプライチェーンと国内の賃金・価格転嫁が引き続き柱になる。
(b) 拡張される潮流
今回の利上げが3年ぶりであることは、米国が長期にわたり緩和的な政策を維持してきた反動で、今後は「高めの金利が長く続く」局面に入る可能性を示す。30年債利回り5.29%は、財政拡張とインフレの構造的な上振れリスクを市場が要求している証左であり、短期的な利上げ停止後も長期金利は高止まりしやすい。これは日本の金融機関にとって、外債投資のデュレーション管理と為替リスク管理の難度を上げる。一方、AI投資の拡大が生産性を押し上げれば、実質金利の上昇が株価収益率に与えるマイナスを相殺し得る。CNBCのNVIDIA報道は、その生産性サイクルがまだ初期段階にあることを示唆している。日本市場では、半導体製造装置やデータセンター関連の資本財、電力などAIインフラ需要の裾野が広がる一方、金利上昇の恩恵を受ける銀行・保険も業績改善の候補となる。ただし、米国景気が減速すれば、円高への反転とともに輸出株の戻りは急に失速する。投資家は為替のボラティリティを軽視すべきではない。
(c) 見落とされがちな論点
第一に、ポジショニング面では、FOMC通過後にイベント・プレミアムが剥落し、オプション市場のインプライド・ボラティリティが低下しやすい。ディーラーのガンマ・ポジションが市場の急落を抑える方向に働く半面、CTAなどトレンド追随型ファンドは米金利先物やドル円で一方方向のポジションを積み上げている可能性があり、何らかのきっかけで巻き戻しが起これば、短期的に米10年債利回りが急低下(価格上昇)したり、ドル円が急反落するリスクがある。特にドル円は9月15日時点で154.65円と高値圏にあり、介入警戒ラインが意識されやすい。第二に、制度面では、米規制当局が一部プラットフォームでトークン化された米国株の取引を認可したとCNBCが報じている。これは米国株へのアクセスを時間的・地理的に広げ、日本の個人投資家や小規模機関のフローを変化させる可能性があり、短期的な影響は小さいが、市場構造の中長期的な変数として軽視できない。第三に、財政政策との連動である。CNBCが伝える社会保障制度改革を巡る議論は、中長期的な米国債のタームプレミアムに影響を与える。FRBの利上げが進む中で、財政赤字の拡大が続けば、長期金利は政策金利以上に上振れしやすく、円金利トレーダーは米国債のイールドカーブ・スティープ化と日本の超長期金利への波及を引き続き監視する必要がある。